絵本 |
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□ 題名 | ちっちゃなサンタさん | ||||||||
□ 作 | ガブリエル・バンサン | ||||||||
□ 訳 | もり ひさし | ||||||||
□ 発行 | ブックローン出版 / 1994年12月 | ||||||||
□ サイズ | 27 x 22cm・25ページ | ||||||||
物語の中のサンタクロースが、予定通りにプレゼントを配ることができなくなる、というケースは多々ある。 サンタクロースに降りかかってくるアクシデントは、物語を推進するための種になる。 またアクシデントの内容よって、物語の面白さが左右されることもある。 しかし、しかし、「ちっちゃなサンタさん」には…… その辺の展開が何もない……何も書かれていない。 ただ「ちっちゃなサンタさん」は、12月24日に空から降りてきただけだ。 しかも、たった1人で、パラシュートにぶら下がって。 プレゼントの入った袋などは持っていない。 何の説明もない…… 女の子が「ちっちゃなサンタさん」が降りてくるのを見てしまう。 女の子とサンタクロースの会話…… ─プレゼント もってこないの ─わたしは なんにも もっていない ちっぽけな サンタクロースなんだよ。 いいですね〜!!! 説明をされたら、私たちにかけられた物語の魔法が解けてしまうかもしれない。 だから説明なんかいらない。 サンタクロースがプレゼントを持ってなくたっていいじゃないか! なんでトナカイが引くソリにのって、ベルを鳴らさなくちゃいけないんだ! なんで「ホッホホー」なんていう奇妙な声を出さなくちゃいけないんだ! 物語の中の「ちっちゃなサンタさん」を受け入れればいい。 一見、情けなくて、頼りなさそうで、暗そうで、貧相で、ちっちゃなサンタクロースがいたっていい。 「ちっちゃなサンタさん」は、従来のサンタクロースとは違う、というだけではない。 私が、たった今書いたように…… 「〜だっていいじゃないか!」 「〜で何が悪いんだ!」 なんてことは、叫ばない。 悪いサンタクロースの方に行ってしまうこともない。 それに「ちっちゃなサンタさん」は、たたずまいがいい! 何もしていない立ち姿だけで、他人に「いい!」と言わせることは、なかなか難しいことだ。 よく見ると「ちっちゃなサンタさん」は、とても人の良さそうな、優しそうな目をしている。 それに、それに…… 「ちっちゃなサンタさん」は、おもちゃなんていうプレゼントではなく、もっと、もっと、もっと、大切な何かを女の子に残していくのだから…… それに気付くかどうかは、女の子と読者の問題だろう。 そんなことも含めて、もろもろの説明なんていらない。 「ちっちゃなサンタさん」は、とにかくクリスマスイブの日に、空から降りてくる。 それだけでいい。 素直にそう思うことができたなら…… クリスマスの日に「ちっちゃなサンタさん」のことを思い浮かべるだけで、誰でもが安らかな気持ちになれるはずです。 |
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題名:ちっちゃなサンタさん |
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