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絵本

 題名 カニ ツンツン
  金関 寿夫
  元永 定正
 発行 福音館書店 / 2001年10月
 サイズ 27 x 20cm ・ 32ページ
 カニ ツンツン ビイ ツンツン
 ツンツン ツンツン
 カニ チャララ ビイ チャララ
 チャララ チャララ

 なんじゃこりゃ〜と、思うかもしれませんが、これは「カニ ツンツン」の本文の出だしです。
 これは物音などを表していて、例えば続きは・・・
 「今夜も、へたくそなトランペットをクマさんが吹いているようです。隣に住んでいるウサギさんは、うるさくて眠ることができません」
 なんてことで物語が始まるのかというと、そうではありません。
 同じような感じの文字と共に、なぜかピッタリとマッチしているヘンテコリンで色鮮やかな絵が、32ページを埋めつくしているのです。
 「こんなものわけがわからん!」と言って、絵本を閉じてしまってはいけません。わけが、わからないものから湧き上がってくるおもしろさを見つけることも楽しいのです。

 わけなんてわかるはずないのです。もしかしたら、わかっちゃいけないのかもしれません。
 こんなもん何がおもしろいのかね〜と思いながら絵本をながめていればいいのです。
 そのうちに、きれいな色だな〜とか、ヘンテコだけれどもおもしろい形だな〜と感じてくるのです。ページをめくっていくと、そのきれいな色をしたヘンテコなものたちが、楽しそうに動き出し始めます。話していたり、駆け出したり、踊っていたりしているように感じるかもしれません。
 そうすると、無機質で機械の音のようにしか感じていなかった「カニ ツンツン」の文字に、リズムがついてくるのです。体が揺れてきます。いつの間にか、「カニ ツンツン ビイ ツンツン」とつぶやきだします。メロディーが加わって、歌い始めているかもしれません。体がワクワクしてきて、楽しい気分になってくるのです。
 そして、知らないうちに立ち上がって頭を揺らしながら踊っているかもしれません・・・かなり危険で楽しい絵本なのです?!

―――――――――――――――――――・―――・―・

 一人で読んでいる時は、自分が気持ちよくなればそれでいいのです。でも、家の外で読み聞かせをするとなると、そうもいきません。
 頭を揺らして踊りながら読むのは、ちょいと恥ずかしいし、読み終わったら、読み聞かせの会場には、誰もいなくなっていたということになりかねません。

 「カニ ツンツン」をどう読めばいいかなんてことに、決まりはありませんし、読み聞かせ方にも決まりなんてありません。
 自分で楽しみながら読めば、子どもたちは本の力で喜んでくれるはずです。しかし、読み手にとっては、物語という柱がないと「これでいいのかな〜?」という不安に襲われることがあります。
 そう感じながら読み続けることは、読み手が楽しくないだけでなく、聞き手もそれを感じとって楽しさが半減してしまうかもしれません。

 もちろん、そんな不安を感じない人はいいのですが、そうでない人は、どうすればいいのでしょうか。
 今回私がやったのは、書かれている文字に対して、意味や物語を当てはめていくということです。
 そうすることを思いついたきっかけは、「カニ ツンツン」の最後が「チャララ」で終わっているのですが、それがどうしても「さよなら」や「じゃあね」にしか感じられなくなってしまったからなのです。
 そう思って読んでみると、いろいろと出てきます。これは、こんな意味だとか、これを言いたかったのだとか、想像が膨らみます。そして、古代文字を解明しているような気分になって楽しくなってきます。
 もちろん、すべて自分の勝手な解釈です。
 全部でなくてもいいので、ところどころにそんなところを見つけておくと、楽しいだけでなく、気持ちの拠り所ができて不安になることは少なくなります。また、そうすることによって、思わぬおもしろい「間」などが、できることもあるのです。
 一度、試してみてくださいね。

題名:カニ ツンツン

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