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絵本

 題名 もこ もこもこ
  谷川 俊太郎
  元永 定正
 発行 文研出版 / 1995年2月
 サイズ 28.3 x 22.4cm ・ 29ページ
 私が大人になってから、絵本を読むきっかけを作ってくれた絵本です。
 とにかく、衝撃的でした。
 それまで絵本は、子どもの読むものだという思い込みがあったのですが、そんな考えを一新させてくれた一冊です。

 何がそんなに衝撃的だったかというと、絵本の中に、いわゆる物語というものが、なかったことが一つです。
 「もこ もこもこ」は、頭で理解しようとしたら、訳が分からなくなる絵本です。私は、一人で勝手に「体感絵本」と呼んでいるのですが、体で感じる絵本だと思っています。
 最初に「もこ もこもこ」を読んだ時は、ショックを受けながら、体がウズウズするのを感じていました。まるで、初めて暗黒舞踏を見たときのようでした。そして、「こんな前衛的なものが、ほんとうに子どもの本なのだろうか?」と思ったのです。
 でも後日、「もこ もこもこ」は、子どもたちに大人気の絵本だということを知って、「このようなものは、子どもの方が受け入れやすいんだ」と、納得しました。
 大人は、頭で理解をしようとしてしまいますが、子どもは、体で感じることが得意だということです。
 大人になっても体で感じることを忘れないようにしたいものです。なぜなら、それは、とても楽しくて気持ちの良いことだからです。
 「もこ もこもこ」を子どもだけのものにしておくだけでなく、大人も体感することを思い出して楽しみましょう!

 さて、「もこ もこもこ」の内容は、こんな感じです。
 トニカク、もこもこもこ ナノデス。サイショニ、もこ ガ、もこ ットキテ、もこもこ ットシテ、もこもこもこ ットナッテシマウノデス。

 「何を書いているんじゃ!」と思うのでしょうね。
 けれど、絵本を読んでみたって同じことです。やっぱり、「何を書いているんじゃ!」と思う人がたくさんいるはずです。

 けれどもです。私が書いたものは、「何を書いているんじゃ!」で終わってしまいますが、「もこ もこもこ」には、その先の世界が待っているのです。
 美しい色彩で、おもしろくて親しみのある絵が描かれた「もこ もこもこ」を眺めているだけでも十分に楽しめますが、それだけではありません。
 「もこ もこもこ」は、物語を生み出すきっかけにすぎません。「もこ もこもこ」の物語は、一人一人の読者の頭の中で形作られていくのです。「もこ もこもこ」の物語は、無数に存在しているのです。

 ただし、物語が頭の中に浮かんでこなければ、「もこ もこもこ」は楽しめないのかというと、そうではありません。
 感じるのです。体のあちらこちらで感じるのです。コチョコチョと、ジワジワと、シミジミと、クリクリと、カリカリと、体のどこかが、反応するのです。
 そんな反応があったなら、訳の分からないものだからといって、反応を止めようとしてはいけないのです。逆に反応に身をまかせてしまいましょう。きっと、心地よい体験をすることができるはずです。

 「反応って、なんなんだ?」という声が聞こえてきそうですが、とりあえず「もこ もこもこ」を読んでみないとわからないことです!
 ちょいと本屋や図書館に足をのばせば、こんな体験をすることができるのですから、たしかめてみない手はありません。

題名:もこ もこもこ

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