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絵 本

 題 名 かいじゅうたちのいるところ
  モーリス・センダック
  神宮 輝夫
 発 行 冨山房 / 1975年12月
 原書発行 米国 / 1963年
 サイズ 23 x 25cm・40ページ
 表紙には、目を閉じて寝ているように見える「かいじゅう」が、一匹だけ描かれていて他には誰もいません。 とても静かな雰囲気です。

 主役で登場するのは、いかにもいたずら好きそうな目をしているマックスという少年です。オオカミのぬいぐるみを着たマックスは、家の中で大暴れをして、おかあさんに、寝室に放り込まれてしまいます。
 でもマックスは、ひとつも悲しくありません。遊びは、これからなのですから。
 寝室が、冒険の場へと変化をしていくのです。森が現れ、大海原が出現し、船に乗ったマックスは、「かいじゅうたちのいるところ」へ向かいます。

 私は、本文中のマックスたちの騒がしさと、表紙に一匹だけ描かれた怪獣と周囲の静けさが、しっくりと結びつかないな〜と思っていました。
 でも、そう思った理由を解き明かせるかもしれないヒントを見つけました。
 「かいじゅうたちのいるところ」で現れた怪獣たちの中には、一匹だけ人間の足をした怪獣がいるのです。それが、表紙に描かれている怪獣です。

 それで、この怪獣は、着ぐるみを着ているのではないだろうかと思ったのです。本文中で、木にぶら下がっているところなどを見ると、特にそんな感じがします。
 誰が着ぐるみを着ているのかというと、読者です。モーリス・センダックさんは、読者を絵本の中に描き込んでくれていたのかもしれません。

 そう考えると、もう一つ不思議だな〜と思っていたことの謎も、一緒に解けるような気がしました。
 それは、最後に「まだ ほかほかと あたたかかった。」とだけ書かれている、絵のない真っ白なページのことです。
 前のページからのつながりを考えると、大冒険の後、おかあさんがマックスのために用意していた食事は「まだ ほかほかと あたたかかった。」ということになります。でもこれでは、食事が、とても強烈で印象的すぎるなと思ったのです。
 ですから、この最後の言葉を、それまでの物語から引き離すために、真っ白なページにしたのではないでしょうか。そしてその言葉を、怪獣の着ぐるみを着た読者が描かれていると思われる表紙に、結びつけようとしたのではないかと思うのです。
 それでは何が、「まだ ほかほかと あたたかかった。」のでしょうか。

 私達は、「かいじゅうたちのいるところ」に行こうと思えばいつだっていけるのです。だって表紙には、着ぐるみを着た読者だけで、マックスはどこにもいないのですから。
 それに「かいじゅうたちのいるところ」に行くための船も、ちゃんと描かれています。この船は、きっと私達が乗ろうと思えばいつでも乗れる船です。
 ですから、「かいじゅうたちのいるところ」のような世界は、いつまでも「ほかほか」のままで残しておきたいなと、あらためて思うのです。

かいじゅうたちのいるところ/名作絵本

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