絵 本 |
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□ 題 名 | しろいうさぎとくろいうさぎ | ||||||||
□ 作 | ガース・ウイリアムズ | ||||||||
□ 訳 | まつおか きょうこ | ||||||||
□ 発 行 | 福音館書店 / 1965年6月 | ||||||||
□ 原書発行 | 米国 / 1958年 | ||||||||
□ サイズ | 31 x 23cm・40ページ | ||||||||
この物語を、うさぎではなく人間の話に置き換えて、タイトルを変更するならば「女と男」になる。 けっして「女の子と男の子」ではない。 「くろいうさぎ」は、何事かに悩んでいる。 「しろいうさぎ」と楽しく遊んでいても、何度も悲しそうな顔をして座り込んでしまう。 心配する「しろいうさぎ」。 「くろいうさぎ」が悲しそうな顔をしていたのは、ある願い事をしていたから…… その願いとは、 「いつまでも きみといっしょに いられますように」ということ。 「きみ」というのは、もちろん「しろいうさぎ」のことだ。 これは、「くろいうさぎ」の恋心だ。 しかし「くろいうさぎ」には、恋した人の舞い上がるようなワクワクドキドキ感がないばかりか、何度も悲しそうな顔をしてしまう。 これは、恋する切なさだけではないはずだ。 恋の相手の「しろいうさぎ」は、目の前にいて一緒に楽しく遊んでいるのだから。 それでも、恋心を伝えられない切なさというのはあるかもしれない。 けれども「くろいうさぎ」の表情は、そのようには見えない。 はかなさを感じているような、心底悲しみをたたえた顔だ。 すると、気になってしまう。 「くろいうさぎ」が「しろいうさぎ」に打ち明けた内容…… 「いつまでも きみといっしょに いられますように」という願い事。 なぜこの時「僕は君のことが好きなんだ!」と、ストレートに言わなかったのか? 繰り返しになるけれども表情を見ると、たとえば恋することが初めてのことで、その気持ちに戸惑っているというようなことではないはずだ。 もっと違う何かを感じている顔だ。 きっとそれは…… どんなに願ったって、好きな相手といつまでも一緒にいることは出来ない…… ということを「くろいうさぎ」は知ってしまったのではないだろうか。 それは、気持ちは移ろい行くもので、いつかは離れてしまうものだということだけではない。 心が離れることがなかったとしても、「死」というものだけは避けることはできないということだ。 このように考えると「うさぎ」の人間的な表情が、見る側に、違和感なくよりいっそう迫って訴えかけてくる。 このはかなさを乗り越えていくためには、どうしたらいいのか? いつまでも一緒にいられないということを知った上で…… だからこそいっそう、恋し、愛し続けるしかない。 日々の生活の中で、どんなに辛いことや苦しいことがあったとしてもだ。 そんな決意が、ラストの見開きに描かれた2匹のうさぎの表情にうかがえる。 だから…… 「しろいうさぎとくろいうさぎ」は、けっして「女の子と男の子」ではない。 成熟した「女と男」の話に違いないのだ。
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しろいうさぎとくろいうさぎ |
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