「ぺこぺこ」といったって、お腹がすいているわけじゃない。
それに、空き缶がへこんで、ゆがんでいるわけでもない。
(でも、空き缶のぺこぺこは、なぜか大いに関係がある……)
「ぺこぺこ」は、しきりにおじぎをしているさまを表している。
「ぺこぺこ」のイメージは、たとえば礼儀正しさといった良いものではない。
こびへつらっているようなマイナスのものになる。
それなのに、この絵本の中で「ぺこぺこ」しているのは、一国の王様だ。
王様が「ぺこぺこ」すると、周囲の者は、おきさき様までもが「ふん」と言う。
こんなことで国を治めることが出来るのだろうか?
と、思っていると……
なんとこの王様、仕掛けられた戦争を「ぺこぺこ」することによって、互いに死者を出すこともなく収拾させてしまう。
王様が「ぺこぺこ」できるのは、人としての大きさがあるからなのだろう。
そして周囲の者が「ふん」と言ってしまうのは、人として未熟だからなのだろう。
まぁ、そんな周囲の者にも、感心できる点はある。
思わず「ふん」と言ってはいても、ちゃんと王様の偉大さを分かっていて、王様を王様として認めているところだ。
これは王様を買い被っているわけではない。
ひとつ重要なシーンがある。
戦争開始直前のこと……
「おうさまは ゆっくりと かがみのまえで、よろいかぶとをかぶって、かたなをもつと、かがみにむかって ぺこりとあたまをさげた。」
……と、書かれている。
王様の戦争に対する気持ちを表している重要な場面だ。
鏡の前の王様の顔は描かれてないのだけれども、腹をくくった王様のりりしい顔が見えたような気がした。
周囲の者とは、胆(きも)の座り方が違う。
王様の体の中には揺るぎない芯が通っているので、決断に速さがあり命令も明確だ。
命令に対して周囲の者は、王様への信頼があるために、いつもの態度とは裏腹に、迷いなく付き従うことが出来る。
とてもすばらしい国だ。
はたしてこんな国はあるのだろうか?
……そこで気がつく。
おじぎをする主な国は……日本……
……そこで考える。
王様の体の中に通っている揺るぎない芯とは何なのか!?
……9条……!
偉大な王様は、私たちに、そんなことまで考えさせようとしているのかもしれない。
|