ゲッティーセンの赤い砂 | |||||||||
by chaury■■■■■■■■■■■ |
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■ ゲッティーセンは、サンタクロースのスノーケが住んでいるところです。 緑の草原が、どこまでも続いて、たくさんの動物が、くらしています。 草原の中には、プントという木が、たった一本だけ立っています。 これは、スノーケが、育てている夢をかなえてくれる木です。 一年の終わりが近づくと、プントの木の赤い実は、大きな袋に入れられます。そして、クリスマスの夜に配られるのです。 クリスマスプレゼントをまっている人は、たくさんいます。スノーケは、その人たちの、ほしい物の数だけ、プントの木の実を置いてくるのです。 でも、プントの木の実は、だれも見ることができません。木の実は、朝の光をあびると、あっというまに、みんなの、ほしかった物に、変わってしまうからです。 今年も、もうすぐクリスマスが、やってきます。それなのに、プントの木は、元気がありません。 毎年、収穫の時には、木の実がつぎからつぎへと水が流れるように、こぼれ落ちてきました。 でも今は、しずくが、したたるようにしか、みのらなくなっています。 人のほしい物が、ふえたのです。 前の年までは、大きな袋が一つあれば、じゅうぶんでした。 プントの木の実は、手のこぶしくらいの大きさです。でも、袋の中に入れると、ゴマよりも小さいツブに変わるのです。 それでも今年は、三つの袋をいっぱいにしなければならなくなったのです。 プントの木は、二つの袋をパンパンにして、三つめの袋に入れ始めたころから、元気がなくなってきました。 スノーケは、プントの木に水をあげると、木をなでながら、声をかけました。 「むりをさせちゃって、ごめんな。だいじょうぶか、だいじょうぶか」 そして、木をだきしめて耳をつけてみます。 トクン、トクン、トクン・・・・・・ 木の中から、うなずいているような音が聞こえてきます。 プントの木は、やっとのことで、プレゼントの数だけ、赤い実をみのらすことができました。 でも来年も人のほしい物がふえたら、プレゼントは、たりなくなってしまうでしょう。 ◇◇◇ つぎの年のクリスマスが、もうすぐやってきます。 プントの木は、今年も元気がなくなっています。 人のほしい物が、ふえてしまったのです。 今年は、六つの袋をいっぱいにしなければなりません。 でも、五つめの袋に入れはじめたところで、プントの木の実は、一つもみのらなくなりました。 スノーケは、こまってしまいました。 木の実がなければ、プレゼントをもらえない人ができてしまいます。 スノーケは、葉っぱをちぎることにしました。 プントの木は、どこをとってもプレゼントになります。 でもそれは、とても危険なことでした。葉っぱや枝を、とりすぎれば、木が、枯れてしまうこともあるからです。 「まだ、緑色なのに、ごめんな・・・・・・」 スノーケは、そっと一枚づつ葉っぱをちぎっていきました。 そしてなんとか、すべてのプレゼントをそろえることができたのです。 クリスマスは、ぶじに終わりました。 でも、スノーケは、つぎの年のことで頭をなやましています。人のほしい物が、また、ふえてしまったら、どうしようかと考えているのです。 スノーケが見あげたプントの木は、少し細くなってしまったように見えました。 そこへ、ゲッティーセンでくらす動物たちが、近づいてきました。 「この、ひろい草原で、たくさんのプントの木を育ててください」 スノーケは、びっくりしました。動物たちは、食べるための草がなければ、生きていくことができなくなってしまうからです。 でも、動物たちは、いいました。 「私たちは、べつの草原をさがしにいきます」 スノーケは、動物たちのやさしさが、うれしくて泣きました。そして、友だちだった動物たちと、わかれることが悲しくて泣きました。 動物たちも、同じ気持ちです。 「わたしたちも悲しいのです。ほんとうは、プントの木を、いっしょに育てたかったのですが、ざんねんです」 プントの木は、スノーケが育てたものでなければ、人のほしい物に変わることはなかったのです。 動物たちが、いなくなった草原は、今までより広くて静かになったような気がします。 たった一人になったスノーケは、地平線まで続くゲッティーセンの草原を、たがやしはじめました。 ◇◇◇ つぎの年のクリスマスが、近づいています。 ゲッティーセンには、もう、草原はありません。 かわりに、スノーケの腰の高さくらいしかないプントの木が、ひょこひょこと育っています。 一つだけ大きな最初の木も、元気をとりもどしているようです。 この年も、人のほしい物は、ふえていました。でも、たくさんの、ちっちゃなプントの木のおかげで、プレゼントは、かんたんに、そろえることができたのです。 その年から、スノーケは、なんの心配もなく、クリスマスをむかえることができました。 なん年かがすぎて、小さかったプントの木たちも、最初の一本の木と、変わらないくらいに大きくなりました。 プントの木は、いつの年でも、たくさんの赤い木の実でかざられました。 それなのに、プレゼントの数が、たりなくなる時が来てしまったのです。 つぎのクリスマスが、せまっています。 スノーケは、プントの木の実も葉っぱも、とりつくしていました。 パンパンになった、いくつものプレゼントの白い袋が、青い空にとどくくらいの山になっています。 それでも、たりないのです。 スノーケが、どっちを見ても、枝だけになったプントの木たちの中で立ちつくしています。 つかれていました。 プレゼントは、どうしたらいいのでしょうか。 もう、どうすることもできません。 ふらっと、スノーケが動きました。 そしてスノーケは、だまったまま、プントの木をオノで切り倒しはじめたのです。 ◇◇◇ クリスマスが、終わりました。 スノーケが、なにも残っていないゲッティーセンの土の上に座っています。 たった一本、最初から立っていたプントの木だけが、スノーケによりそっています。 でも、力を使いはたして、枯れていました。枯れたプントの木は、プレゼントにすることができなかったのです。 空と大地がくっついているところに、大きな太陽が、しずもうとしています。 なにもなくなったゲッティーセンが、まっ赤に、そまりました。 ギリギリと熱い太陽が、空も大地も空気も、ぜんぶを焼いているのです。 つぎの日、ゲッティーセンは、赤い砂がどこまでも続く砂ばくに変わっていました。 つぎの年のクリスマスプレゼントは、どうなったのでしょうか。 スノーケは、クリスマスの街の中に、砂ばくの赤い砂をまいたのです。 赤い砂は、みんなのほしい物に変わることはありません。 でも、だれももんくを言う人は、いませんでした。 もうひとつ、いつもと、ちがったことがあります。 クリスマスが終ると、みんなが、木をうえて育てはじめたのです。 つぎの年のクリスマスにも、みんなは、木をうえました。 そして、一年間育てて少し大きくなった木には、きれいに、かざりつけをしたのです。 いつまでも、元気に育つようにと願いをこめながらです。 赤い砂が、みんなに、そうさせたのかもしれません。 今でも、サンタクロースのスノーケは、クリスマスの夜に、ゲッティーセンの赤い砂をまいているはずです。 ■ |
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