絵本 |
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□ 題名 | ヤクーバとライオン1 勇気 | ||||||||
□ 作 | ティエリー・デデュー | ||||||||
□ 訳 | 柳田 邦男 | ||||||||
□ 発行 | 講談社 / 2008年3月 | ||||||||
□ サイズ | 31 x 21.5cm・32ページ | ||||||||
□ 題名 | ヤクーバとライオン2 信頼 | ||||||||
□ 作 | ティエリー・デデュー | ||||||||
□ 訳 | 柳田 邦男 | ||||||||
□ 発行 | 講談社 / 2008年7月 | ||||||||
□ サイズ | 31 x 21.5cm・32ページ | ||||||||
「ヤクーバとライオン1 勇気」の内容は、最後まで紹介しています。 ネタバレです。 けれども、絵本は絵もいっしょに眺めて楽しまなければ、知っているとは言えません。 特に、この絵本の絵は、必見です! ストーリーが分かったとしても、実際の絵本を手にとって、ご覧になってください。 …………………………………………………………………………… 重すぎる……と、思った。 だから、「ヤクーバとライオン1 勇気」だけで終わりにしてしまっては、いけないと考えた。 小学校内でのおはなし会で、80人くらいの3年生と、この絵本で「よみっこ」をしようと決めた時の気持ちだ。 ヤクーバは、アフリカ奥地の村に住む少年だ。 少年ヤクーバは、戦士になる年齢に達した。 けれど、年齢だけでは名誉ある戦士になることはできない。 その証として、一人で狩に出て、一人でライオンと戦い、倒して来なければならなかった。 ヤクーバは、狩に出る。 そして、ライオンに出会う。 しかし……ライオンは、他のライオンとの戦いで深く傷つき、戦えるような状態ではなかった。 そのライオンが、ヤクーバに訴えかけてくる。 傷ついたライオンを殺して戦士になるのか……それとも殺さないで、本当に気高い心を持った人間になるのか…… ライオンの訴えは続く。 しかし殺さなかった時は……村の人達から仲間はずれにされるだろう…… どちらを選ぶのか……選ぶのは、おまえだ…… ヤクーバは、殺さないことを選んだ。 ヤクーバは、戦士になることはできなかった。 そして一人……村のはずれで、牛の世話をする仕事についた…… 小学3年生に、この「勇気」を背負わせることは重いと思った。 たしかに、これこそが勇気だ。 けれども、大人でも逃げてしまうだろう。 そして逃げた大人は言うのかもしれない…… 「バカだ! もっと利口に立ち回ることもできたのに」 しかしそれは、自分に勇気が無いことを誤魔化すための言葉に過ぎない。 この絵本では、二者択一を迫っている。第二、第三の選択肢は、この物語の中には存在しない。 処世術の問題ではないからだ。 読者は、人間としての気高さ(矜持・尊厳)を持ち得るかどうかという問題を突きつけられている。 そしてこの場合、その気高さを保つためには、大きな自己犠牲が伴なう。 のみならず、見返りが何もない。 ただ……ラストシーンでは…… この後、村の牛たちは、ライオンに襲われることはなくなった、と書かれている。 これだけだ。 本当の勇気を持つということは、なんて厳しいことなのだろうか…… 大人の私が、そう思った。 だから、「ヤクーバとライオン1 勇気」だけならば、小学3年生の前で「よみっこ」をすることはなかっただろう。 けれども、「ヤクーバとライオン2 信頼」まで伝えれば、小学3年生でも、厳しいという重苦しさだけでなく、前向きな何かを感じてもらえると思った。 タイトルに書かれている「信頼」…… (この「信頼」は、「絆」という言葉に置き換えることもできるはずだ) これこそ、ヤクーバが得た唯一の物だったのだと思う。 そうすれば…… ヤクーバは、「勇気」を持って人間としての気高さを保ったことによって、かけがえのない「信頼」を得ることができた…… ……と、読むことができる。 (「できる」と書いたのは、他の読み方も、できるということだ) これならば、「よみっこ」ができると思った。 そして、このテーマを伝えるために、最も重要なものだと考えたのが、物語の終盤に書かれているヤクーバの言葉…… 「友だちがたずねてきただけさ」 とにかく、この言葉のために、この言葉に向かって、「よみっこ」を進めていくことにした。 この言葉で何も伝わらなかったら、「よみっこ」する意味はないと考えていた。 おはなし会当日…… 「──1 勇気」「──2 信頼」のタイトルは、しっかりと読んだものの、気持ちは、ひと続きの作品として「よみっこ」をした。 うれしいことに、みんな静かに耳を傾けてくれた。 そして、あの言葉の後に、2つ3つの声が上がった。 おそらく、「わー」とか「おー」とかいう小さな声だったと思うのだけれども、なぜだか、よく覚えていない。 はたして…… みんなは、どんなことを考えてくれたのだろうか…… |
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